2013年度 第2回 発達臨床研究ネットワーク研修(2013年12月22日)の報告

今回は、発達支援に携わる臨床発達心理士に、より一層の理解が求められている「子どもの虐待」をテーマとしました。まず、打越氏から、虐待に関する基本的な理解と対応についてのご講義をいただき、次に大谷氏より、虐待が子どもの発達に与える影響について発表して頂きました。その後、お二人の先生のお話をふまえ、グループに分かれて話し合いを行いました。

日程 2013年 12月22日(日)  9:30~15:30
会場 お茶の水女子大学共通講義棟1号館301号室
参加人数 67名

午前の部

テーマ 虐待の基本的理解と対応について
  • 打越雅祥先生(和光大学非常勤講師)
  • 大谷洋子先生(横浜市西部児童相談所―保護係)

はじめに、児童相談所に児童福祉司としてご勤務されている打越氏より、児童虐待における法制度、相談の流れについての説明の後に、性的虐待の対応を中心とした講義があった。

性的虐待の特殊性として、①被害の発見が困難であること、②子どもに愛着、自己評価、そして対人関係等に深刻なダメージを与えることがあげられ、今後の課題として、行政におけるガイドラインの作成、被害児童に対する面接者の育成、被加害保護者への理解と支援などのご提案を頂いた。

その後、児童相談所一時保護係に心理士としてご勤務されている大谷氏より、入所依頼が絶えず常に定員オーバーの上、滞在が長期化しているという一時保護所の厳しい現状の説明の後、器質と環境が複雑に作用している発達障害群の子どもたち(特に性加害の子ども)への発達支援の方法の発表があった。 最後は、グループでの話し合いの後、お二人の先生に質疑に対し応答して頂いた。

午後の部

論評会
  • 山本佐江(東北大学大学院博士後期課程)
  • 東 敦子(のぞみ発達クリニック所長)

今回は2人の方に研究を発表して頂いた上、グループに分れて討議を行った。夏の論評会に続き再度、山本氏が「小学校1年生1学期算数授業における形成的アセスメント~教師のフィードバックによる学習調整の差異の考察~」と題した研究発表を行った。 山本氏からは、「教師の形成的フィードバックが、教師と子どもの間の相互作用にどのような影響を与えるだろうか」というリサーチクエスチョンについて、小学校1年生の2クラスの算数授業の参与観察によって得られたデータを分析した研究の発表があった。 東氏からは、質的研究法の目的と意義の講義の後に、氏が質的研究方法でまとめあげた掲載論文を題材に、質的研究法の分析プロセスに関する具体的かつ詳細な説明があった。2氏の講演を受けて「臨床を研究にする可能性について」グループで話し合いが行われた。