日本臨床発達心理士会 東京支部ホームページ
研修報告【レポート】

2019年度 第1回 資格更新研修会・ネットワーク研修会 (2019.06.02)の報告

開催日 2019年 6月2日
会場 AP浜松町

資格更新研修会

開催時間 10:00 ~ 11:30
参加人数 211名

「発達障害がある人の就労支援」

(梅永雄二 先生)

発達障害がある人の就労支援を、現在の社会状況の統計データ、発達障害がある人が働く職場の好事例、自閉スペクトラムがある人の特性、発達障害がある人の離職理由、仕事に必要なハードスキル(作業を学習するスキル)とソフトスキル(人との関わり方のスキル)、先生ご自身が経験されている相談事例の概要などの様々な観点からお話いただきました。また、実際に発達障害がある人が働いている職場の様子についても紹介があり、当事者の考えや職場の上司の考えそれぞれに触れることができました。

特に、発達障害がある人への職選び、職業指導、就職後の職場適応・定着指導のフォローアップに関して、発達障害特性を踏まえた上でそれらを行うことの重要性が理解できました。

ネットワーク研修会(分科会)

開催時間 13:00 ~ 16:00
1)発達臨床研究NW(参加人数:53名)

「児童思春期の高機能自閉スペクトラム症者の診断と支援をつなげる 
 - 当事者と家族に対する認知行動療法を用いた心理教育プログラムを通しての検討 -」

(大島郁葉 先生)

午後の発達臨床研究ネットワーク研修会では、千葉大学の大島郁葉先生に、先生ご自身が開発された「ASD に気づいて ケアするプログラム(Aware and Care for my Autism Spectrum Traits: ACAT)」と、そのプログラムの効果を検証するための研究枠組みについてご紹介して頂きました。ACATは、児童思春期の高機能ASD者とその保護者に対し、AS特性をもちつつも、特性に対し機能的な対処 方略を高めることでの社会適応の向上を目的とした認知行動療法による心理教育プログラムであり、ご講演を通して、高機能ASD者が自己理解する上で「診断」が大切であること、そして「診断」後の支援で臨床発達心理士ができることについて、多くの学びを頂きました。参加者からは、「実践事例とデモンストレーションを通して、プログラムをより具体的に理解することができた」「ACATプログラムの書籍化を待ち臨床に活かしたい」と好評でした。

2)子育て・発達支援NW(参加人数:106名)

「社会性と感情リテラシーを育てる理論と実践
 - ソーシャルエモーショナルラーニングの枠組みから -」

(渡辺弥生 先生)

子育て・発達支援NW分科会では、法政大学の渡辺弥生先生に、感情についての様々な研究結果をあげていただき、感情の強さや種類・時間による変化等『感情リテラシー』やソーシャルスキルトレーニングについてのご講義を頂きました。講義の間にロールプレイ、「レジリエンス筋肉を鍛えよう」「リフレーミングレッスン」や気持ちのゾーンについて等ワークシートを使ったワークも行い、とても充実した研修会となりました。

普段、お子さんに対して、「今、どんな気持ち」と、気軽に聞いてしまうことが多くありますが、今回の講演やワークを通じて、自分の気持ちを認知し表現することは、いろいろな側面での発達が必要であること、そして大人でも容易でないことを改めて学ぶことができました。

講義を聞かれた方からの感想も「感情の本質について色々考えさせられた」「具体的で親へのアプローチに使えるヒントをたくさんもらえた」「ワークが豊富で良かった」等大変好評でした。

3)特別支援教育NW(参加人数:52名)

「知的障害者の生涯発達について」

(平井威 先生)

「生涯にわたって『伴走者』が必要。特に『生きづらさを抱える人』に手を差し伸べる『専門家のさりげない支援』が大切である」を大きなテーマにご講演いただきました。ふだん学齢期の子どもたちを対象とした支援に取り組んでいる参加者も多く、「つきあうのこと(恋愛・結婚支援)の欠落と結婚推進室「ぶ~け」の取り組み」を知っておくことの大切さ、学齢期の子どもたちが大人になったときにどうなっているか想像できることが、臨床発達心理士には求められていると感じました。

参加者からは「高等部卒業後の豊かな人生に何が必要か、考える材料をたくさんもらった」「たくさんの情報が参考になった」と、好評でした。